この試験が目指すもの

統合失調症患者の約20〜30%は、複数の抗精神病薬による治療でも十分な改善が得られない 「治療抵抗性統合失調症(TRS)」と推定されています。 現在TRSに唯一承認されている治療薬はクロザピン(代謝副作用・無顆粒球症リスク)のみであり、 新たな治療選択肢が切実に求められています。

エベナミドはドーパミンD2受容体を遮断しない全く新しい機序を持つ候補薬です。 既存の抗精神病薬に上乗せすることで、陽性症状(幻覚・妄想)だけでなく 陰性症状(感情の平板化・意欲低下)にも効果を示す可能性があります。

基本情報

試験番号(NCT ID)NCT07184619
試験名ENIGMA-TRS 2
フェーズフェーズ3(ランダム化・二重盲検・プラセボ対照)
試験ステータス募集中(Recruiting)
対象疾患治療抵抗性統合失調症(2剤以上の抗精神病薬で不十分な反応)
介入内容エベナミド(7.5mg/日または15mg/日)+ 既存抗精神病薬 vs. プラセボ + 既存抗精神病薬
主催スポンサーNewron Pharmaceuticals(イタリア・スイス)
主要実施施設UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)、ジョンズホプキンス大学ほか5施設
登録予定人数400名
試験期間12週間(二重盲検)+ 延長フォローアップ

評価指標

主要評価指標(Primary Outcome)

PANSS 総スコア変化量陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総スコアのベースラインから12週時点の変化量
💡 PANSSは統合失調症の重症度評価において国際標準として使用される30項目の尺度です。陽性症状7項目・陰性症状7項目・一般精神病理16項目で構成されます。

副次評価指標(Secondary Outcomes)

PANSS 陰性症状サブスコア陰性症状(感情鈍麻・思考の貧困など)の変化量
CGI-S(重症度)臨床全般印象重症度スコアの変化
NSA-16(陰性症状)陰性症状評価尺度16項目スコア
安全性・忍容性有害事象、体重・代謝指標(エベナミドはD2遮断なしのため代謝影響を確認)

エベナミドの革新的な作用機序

① グルタミン酸仮説とNaVチャネル

統合失調症の病態には、ドーパミン過剰だけでなく前頭前野での「グルタミン酸-NMDA受容体機能低下」が関与していることが近年確認されています。 エベナミドは電位依存性ナトリウムチャネル(NaV)を遮断することで、 過活性化した神経の異常発火を抑制し、間接的にグルタミン酸系を安定化させます。

② なぜドーパミン非依存が重要か

既存の抗精神病薬はドーパミンD2受容体を遮断することで陽性症状を抑制しますが、 陰性症状や認知機能障害には効果が限られ、長期服用では遅発性ジスキネジアなどの副作用が問題です。 エベナミドはD2受容体に作用しないため、こうした問題を避けながら既存薬の補助として機能することが期待されます。

③ ENIGMA-TRS 1の先行結果

先行試験(ENIGMA-TRS 1)では、エベナミドの追加投与によりPANSS総スコアおよび陰性症状スコアが プラセボに対して有意に改善しました(特に15mg/日群)。 この結果を受けてENIGMA-TRS 2(本試験)への投資が決定されました。

参加できる方・できない方

✅ 参加できる可能性がある方

  • 18〜65歳の統合失調症患者
  • DSM-5基準で統合失調症の診断
  • 2種類以上の抗精神病薬を十分な期間・用量で使用したが効果不十分
  • 現在安定した抗精神病薬治療を受けている

✗ 参加できない主な条件

  • クロザピンを現在使用中の方
  • 活動性の自殺念慮がある方
  • 重大な身体疾患(肝機能障害・てんかんなど)がある方
  • 妊娠中・授乳中の方

よくある質問

Q1. エベナミドは単独で使う薬ですか?+
いいえ。エベナミドは現在服用している抗精神病薬に「上乗せ」する補助療法として開発されています。試験中も既存の薬は継続します。
Q2. クロザピンとの違いは何ですか?+
クロザピンはTRSに承認済みの唯一の薬ですが、無顆粒球症(白血球が激減する重篤副作用)のリスクがあり定期的な血液検査が必要です。エベナミドはその副作用プロファイルが異なり、クロザピンが使用できない患者や追加の選択肢として開発されています。
Q3. 陰性症状にも効くのですか?+
先行試験では陰性症状スコアの有意な改善が観察されており、本試験でも副次評価指標として詳細に評価されます。陰性症状(感情鈍麻・意欲低下)に有効な薬剤は現在非常に少なく、承認されれば革新的な選択肢となります。
⚠️ 本記事はClinicalTrials.gov(2026年5月4日取得)の公開情報をもとにした情報提供記事であり、医療アドバイスではありません。治療法の選択・臨床試験への参加については必ず専門の医師にご相談ください。

詳細情報: ClinicalTrials.gov — NCT07184619