この試験が目指すもの

てんかん患者の約30%は複数の抗てんかん薬を試しても発作が完全にコントロールできない「薬剤抵抗性てんかん」です。 日本には約100万人のてんかん患者がいるとされており、そのうち約30万人が薬剤抵抗性の状態と推定されています。

現在使用されている抗てんかん薬(バルプロ酸・レベチラセタム・ラモトリギンなど)は ナトリウムチャネル全般を広く遮断するため、鎮静・認知機能への影響などの副作用が問題になります。 ボルマトリジンは神経発火に関わる特定のNavサブタイプ(Nav1.6)だけを狙い打ちにする 「精密医療型抗てんかん薬」として開発されています。

基本情報

試験番号(NCT ID)NCT07505004
試験名POWER2
フェーズフェーズ3(ランダム化・二重盲検・プラセボ対照)
試験ステータス募集中(Recruiting)
対象疾患焦点起始てんかん(Focal Onset Epilepsy)— 薬剤抵抗性
対象患者18〜85歳、1〜3種類の抗てんかん薬で発作が月2回以上の方
介入内容ボルマトリジン 50mg/日 vs. 100mg/日 vs. 200mg/日 vs. プラセボ(全て1日2回)
主催スポンサーPraxis Precision Medicines(米国)
実施施設数7施設(米国)
登録予定人数300名
試験期間12週間(治療期)+ 12週間(安全性追跡)

評価指標

主要評価指標(Primary Outcome)

焦点発作頻度の変化率(%)ベースライン期(4週)から治療期(12週)にかけての1か月当たり焦点発作頻度の変化率

副次評価指標(Secondary Outcomes)

50%レスポンダー率発作頻度が50%以上減少した患者の割合
発作フリー率12週治療期間中に発作が0回だった患者割合
QoL(生活の質)QOLIE-31によるてんかん患者の生活の質スコア
認知機能(DSST)記号数字照合テスト(認知機能への影響評価)
安全性・忍容性有害事象(特に中枢神経系:めまい・鎮静)
💡 4用量群(3用量 + プラセボ)の比較により、有効性を維持しつつ副作用を最小化する「最適用量」を特定することが本試験の重要な目的のひとつです。

ボルマトリジンの精密医療アプローチ

① Nav1.6チャネルとてんかん

電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)には複数のサブタイプ(Nav1.1〜Nav1.9)があります。 Nav1.6は大脳皮質の興奮性神経(錐体細胞・介在神経)に高密度で発現しており、 神経の繰り返し発火を制御する「再充電速度」の調節において中心的役割を持ちます。 特定のSCN8A遺伝子変異(Nav1.6過活性化)はてんかんの原因になることが知られています。

② 選択性が副作用を減らす

ラモトリギン・カルバマゼピンなどの従来薬はNav1.1・Nav1.2・Nav1.5など複数のサブタイプに作用するため、 心臓(Nav1.5)への副作用や、運動機能(Nav1.4)への影響が問題になります。 ボルマトリジンのNav1.6選択性は、これらの非ターゲット臓器への影響を最小化できます。

③ POWER1での実績(先行フェーズ3試験)

先行のPOWER1試験では、ボルマトリジン高用量群においてプラセボと比較して 月当たり焦点発作頻度が統計的に有意に減少しました(具体的な数値は未公表)。 POWER2では至適用量の確定と長期安全性の確認が目標です。

参加できる方・できない方

✅ 参加できる可能性がある方

  • 18〜85歳
  • 焦点てんかんの確定診断
  • 1〜3種類の抗てんかん薬で治療中だが月2回以上の発作がある
  • 過去12か月の発作記録がある

✗ 参加できない主な条件

  • 全般てんかんや進行性の神経疾患がある方
  • 過去6か月以内に試験的てんかん手術を受けた方
  • 過去1か月以内にてんかん重積状態があった方
  • 重篤な心疾患・肝疾患のある方

よくある質問

Q1. 現在の抗てんかん薬はどうなりますか?+
試験参加中も現在の抗てんかん薬は継続します。ボルマトリジンは追加薬として上乗せします。試験終了後の扱いは研究チームの指示に従います。
Q2. Nav1.6選択性とは何ですか?難しく聞こえますが…+
脳内の「異常発火スイッチ」であるNav1.6チャネルだけを狙い打ちにする仕組みです。従来薬が「全てのスイッチ」を遮断するのに対し、ボルマトリジンは「てんかんに関係するスイッチ」だけを選んで止めるため、副作用(眠気・ふらつき)が少ない可能性があります。
Q3. 認知機能に影響はありますか?+
認知機能(記憶・処理速度)は副次評価指標として詳細に評価されます。Nav1.6選択性により従来薬より認知機能への悪影響が少ないことが期待されていますが、現時点では試験中のため結果を待つ必要があります。
⚠️ 本記事はClinicalTrials.gov(2026年5月4日取得)の公開情報をもとにした情報提供記事であり、医療アドバイスではありません。治療法の選択・臨床試験への参加については必ず専門の医師にご相談ください。

詳細情報: ClinicalTrials.gov — NCT07505004