前立腺がんは日本の男性がん罹患数第1位です(近年)。早期なら手術・放射線で高い治癒率が期待できる一方、転移・進行した場合には薬物療法が主体になります。男性ホルモン(アンドロゲン)が前立腺がんの増殖を促すため、ホルモンを抑える「内分泌療法(ホルモン療法)」が治療の柱です。
前立腺がんの薬物療法の全体像
| 病期・状態 | 主な治療薬 |
|---|---|
| ホルモン感受性転移性(mHSPC) | ADT+ARSI(エンザルタミド/アビラテロン/ダロルタミド/アパルタミド)±ドセタキセル |
| 去勢抵抗性・非転移性(nmCRPC) | エンザルタミド・アパルタミド・ダロルタミド |
| 去勢抵抗性・転移性(mCRPC) | ARSI・カバジタキセル・ルテチウム-PSMA(ルビナウム)・PARP阻害薬(BRCA変異例) |
次世代ホルモン薬(ARSI)の特徴
- エンザルタミド(イクスタンジ):アンドロゲン受容体(AR)を多段階でブロック。mCRPC・mHSPCの両方で承認
- アビラテロン(ザイティガ):アンドロゲン合成を阻害(CYP17阻害薬)。プレドニゾロンとの併用が必要
- ダロルタミド(ニュベクオ):nmCRPCに承認。ドセタキセルとの組み合わせ試験(THUNDER試験)も進行中
- アパルタミド(アーリーダ):nmCRPC・mHSPCに承認。脳移行性が低い設計
BRCA変異とPARP阻害薬
前立腺がん患者の約10〜15%にBRCA1/BRCA2の変異が認められます。この変異がある場合、PARP阻害薬(オラパリブ〈リムパーザ〉・ルカパリブ〈ルブラカ〉)が有効です。遺伝性乳がん・卵巣がんとの関連が深く、家族の遺伝リスク評価も重要です。
mCRPCと診断されたら、担当医にBRCA変異検査(腫瘍組織または血液検査)を受けられるか確認してください。変異がある場合、PARP阻害薬の保険適用が受けられます。
ルテチウム-PSMA(ルビナウム)
PSMAという前立腺がん細胞に多く発現するタンパクに放射性物質(ルテチウム-177)を組み合わせた「放射性リガンド療法」です。2023年以降に日本でも承認されており、PSMA PETで確認したPSMA陽性のmCRPCが対象です。
国内で進行中の前立腺がん治験
- THUNDER試験(ダロルタミド):転移性ホルモン感受性前立腺がんへの試験。国内施設参加
- 次世代ARSI・PARP阻害薬との組み合わせ試験
- 抗体薬物複合体(PSMA標的ADC)の試験
- 免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ(特にMSI-H例)
よくある質問(FAQ)
ホルモン療法はいつまで続けますか?+
転移性前立腺がんでは基本的に長期継続が前提ですが、「間欠的ホルモン療法」といってPSAが下がった時期に一時中断する方法もあります。QOLと効果のバランスを担当医と相談してください。
去勢抵抗性になったら治療の選択肢はなくなりますか?+
いいえ。去勢抵抗性(ホルモン療法が効かなくなった状態)になっても、ARSI・化学療法・放射性リガンド療法・PARP阻害薬など多くの選択肢があります。PSMAの状態やBRCA変異の有無で次の治療を選びます。
前立腺がんの治験はどこで受けられますか?+
国立がん研究センター・大学病院の泌尿器科・腫瘍内科が主な実施施設です。担当泌尿器科医に「治験に参加したい」と伝えるか、治験施設ガイドを参照してください。