大腸がんは日本で罹患数第1位のがんです(男女計)。早期では内視鏡治療や手術で高い治癒率が期待できる一方、進行・転移性大腸がんでは薬物療法が中心になります。近年の遺伝子検査の普及により、大腸がんの薬物療法も「個別化治療」の時代に入っています。

大腸がんの遺伝子検査と治療選択

転移性大腸がんでは治療開始前に以下の遺伝子検査を受けることが推奨されています。

検査項目意味治療への影響
RAS(KRAS/NRAS)変異約50〜60%に変異あり変異ありの場合、抗EGFR抗体薬(セツキシマブ等)が無効
BRAF V600E変異約10〜15%に変異ありビラフトビ+コデルジー+セツキシマブ(BEACON療法)が有効
MSI/MMR(マイクロサテライト不安定性)約5%がMSI-HMSI-Hなら免疫療法(キイトルーダ)が非常に有効
HER2増幅約2〜4%HER2標的治療が有効(承認・治験段階)

MSI-H大腸がんと免疫療法

MSI-H(高マイクロサテライト不安定性)の大腸がんは、免疫チェックポイント阻害剤が非常に効きやすいことが知られています。キイトルーダ(ペムブロリズマブ)は転移性MSI-H大腸がんの一次治療として承認されており、化学療法と比較して大幅に良好な成績を示しています。

MSI-Hかどうかは組織を使ったPCR検査または免疫染色(IHC)で確認できます。大腸がんと診断されたら必ず検査を受けることをお勧めします。

進行大腸がんの標準化学療法

  • FOLFOX・CAPOX(一次治療):オキサリプラチン+フルオロウラシル系の組み合わせ。最も広く使われる
  • FOLFIRI(二次治療):イリノテカン+フルオロウラシル系
  • ベバシズマブ(アバスチン):血管新生阻害薬。化学療法と組み合わせ
  • セツキシマブ・パニツムマブ(抗EGFR抗体):RAS野生型のみ有効
  • ロンサーフ(TAS-102)・スチバーガ:後治療の選択肢

HER2陽性大腸がんへのエンハーツ治験

全大腸がんの約2〜4%を占めるHER2増幅・過剰発現の大腸がんに対し、エンハーツ(T-DXd)の適応拡大試験が世界中で進んでいます。一部は日本国内施設でも参加可能です。

💡HER2陽性の大腸がんと診断されている場合、エンハーツ関連の治験に参加できる可能性があります。担当腫瘍医またはがんゲノム医療の窓口にお問い合わせください。

大腸がん治験に参加するには

進行・再発大腸がんを対象とした治験は、国立がん研究センター・大学病院を中心に複数進行中です。遺伝子変異の種類によって参加できる試験が変わります。

よくある質問(FAQ)

大腸がんステージ4でも治験に参加できますか?+
はい、ステージ4(転移あり)の患者さんを対象とした試験が多くあります。むしろ転移性大腸がんの薬物療法を対象とした試験がメインです。全身状態(PS)と前治療歴が参加条件に影響します。
自分がMSI-Hかどうかはどうやって確認しますか?+
手術で切除した腫瘍組織か生検組織を用いて、PCR検査または免疫染色(MMR-IHC)で確認します。保険適用の検査です。まだ受けていない場合は担当医に確認してください。
遺伝性大腸がん(リンチ症候群)の場合、特別な治療はありますか?+
リンチ症候群に関連した大腸がんはMSI-Hである場合が多く、免疫療法が特に有効です。また家族に対するサーベイランス(定期検診)も重要となります。遺伝性腫瘍外来での相談をお勧めします。