認知症・アルツハイマー病の治療薬は長年「症状を和らげる」対症療法のみでしたが、2023年以降に状況が大きく変わりました。アミロイドβという原因物質を除去する「疾患修飾薬」が相次いで登場し、日本でも使えるようになっています。このページでは2025〜2026年時点の認知症新薬の全体像をわかりやすくまとめます。
認知症新薬の2種類:対症療法薬 vs 疾患修飾薬
認知症の薬には大きく2種類あります。
| 種類 | 代表薬 | 効果 |
|---|---|---|
| 対症療法薬 | アリセプト・メマリー | 記憶・行動の症状を一時的に和らげる。進行は止められない |
| 疾患修飾薬(新世代) | レカネマブ・ドナネマブ | 原因物質を除去し進行スピードを遅らせる。早期ほど効果的 |
承認済み|レカネマブ(レケンビ)
エーザイ・バイオジェン共同開発のレカネマブは、2023年9月に日本で承認されました。アミロイドβの凝集体(プロトフィブリル)に結合して除去する抗体薬です。
- 対象:軽度認知障害(MCI)または軽度アルツハイマー病でアミロイド陽性の方
- 効果:臨床試験で18ヶ月間の認知機能低下を約27%抑制
- 投与:2週間ごとの点滴静注
- 副作用:ARIA(脳浮腫・微小出血)。ApoE4保有者でリスク増
- 費用:薬価年間約298万円(保険適用・高額療養費制度対象)
詳細はレカネマブ(レケンビ)完全ガイドをご覧ください。
承認審査中|ドナネマブ(キシュンラ)
イーライリリーが開発したドナネマブは、2024年7月にFDA(米国)が承認。日本でも同時期に承認申請が行われており、2025〜2026年の承認が見込まれます。
- 標的:アミロイドβのN3pG(ピログルタミル化)型に選択的に結合
- 特徴:アミロイドが一定以上除去できた段階で投与を終了できる可能性(投与期間が短縮できる設計)
- TRAILBLAZER-ALZ 2試験:認知機能低下を約35%抑制(レカネマブより数値上は高い)
- 副作用:ARIAの発生率がやや高め。ApoE4ε4/ε4保有者には慎重投与
ドナネマブとレカネマブは直接比較試験がないため、どちらが「より優れているか」は現時点では結論が出ていません。患者さんの遺伝子型・病状・通院環境によって適切な薬が異なります。
次世代の認知症薬開発動向
- タウ標的薬:アルツハイマーの別の原因物質「タウタンパク」への抗体薬が第Ⅱ〜Ⅲ相試験中
- 皮下注射製剤:レカネマブの皮下注バージョンが治験中。点滴通院から自宅注射へ移行できる可能性
- 予防薬試験:症状が出る前(アミロイド陽性・症状なし)の段階への適応拡大試験が進行中
- BACE阻害薬以外の新機序:シナプス保護・神経炎症抑制など複数の作用機序の薬が開発段階
認知症治験に参加するには
上記の新薬そのものを受けるには保険診療の窓口になりますが、さらに新しい薬や組み合わせ療法については治験への参加が一つの選択肢です。
- アルツハイマー・認知症の治験2025年版:現在国内で募集中の試験一覧
- TRONTIER 1試験:国内11施設参加の神経変性疾患試験(慶應・京大ほか)
- 大学病院の治験参加ガイド
よくある質問(FAQ)
レカネマブとドナネマブ、どちらを選べばよいですか?+
現時点ではレカネマブ(レケンビ)が日本で承認済みで使用可能です。ドナネマブは承認待ちです。どちらが適切かは遺伝子型(ApoE4)・病状・施設の対応状況によるため、担当医との相談が不可欠です。
認知症が中等度以上でも新薬は使えますか?+
現在承認されている疾患修飾薬(レカネマブ・ドナネマブ)は軽度認知障害〜軽度認知症の方が対象です。中等度以上の方には現時点で適応がありません。対症療法薬(アリセプト等)は引き続き有効です。
アミロイドPET検査を受けるにはどうすればよいですか?+
アミロイドPETは認知症専門外来・大学病院の脳神経内科で受けられます。保険適用は限定的で自費の場合は15〜30万円程度かかります。まずかかりつけ医や認知症専門医に相談して紹介してもらうのが一般的なルートです。
家族がアルツハイマーを発症した場合、自分も発症しますか?+
家族歴があるとリスクはやや高まりますが、大部分の発症は環境・生活習慣の複合要因によるものです。ApoE4遺伝子検査は任意で受けられますが、陽性でも必ず発症するわけではありません。遺伝子検査を受ける際は遺伝カウンセリングの利用が推奨されます。