肺がんは日本でがん死亡数第1位の疾患ですが、近年の治療薬の進歩は目覚ましく、ステージ4であっても長期生存が期待できる時代になってきました。このページでは、2025〜2026年時点の肺がん最新治療全体像を、患者さんとご家族向けにわかりやすく整理します。
まず知っておきたい:肺がんの種類と治療の選び方
肺がんは大きく「非小細胞肺がん(NSCLC)」と「小細胞肺がん(SCLC)」に分かれます。非小細胞肺がんが全体の約85%を占め、さらに腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん等に分類されます。
治療選択の出発点は「遺伝子検査」です。肺がんの腫瘍組織または血液(リキッドバイオプシー)を用いた遺伝子パネル検査で、どの変異があるかを調べてから治療方針を決めます。
| 遺伝子変異 | 頻度 | 主な標的薬 |
|---|---|---|
| EGFR変異 | 日本人腺がんで約50% | タグリッソ・イレッサ・タルセバ |
| ALK融合 | 約5% | アレセンサ・ロルラチニブ |
| ROS1融合 | 約1〜2% | クリゾチニブ・エヌトレクチニブ |
| KRAS G12C変異 | 約13%(腺がん) | ソトラシブ(ルマケラス) |
| HER2変異(エクソン20) | 約2〜3% | エンハーツ(承認済み) |
| 変異なし(ドライバー変異陰性) | 残り約30〜40% | 免疫療法±化学療法 |
分子標的薬|変異がある方の第一選択
EGFR・ALK・ROS1・KRAS変異が確認された場合、その変異を狙い撃ちにする「分子標的薬」が第一選択となります。経口薬(錠剤・カプセル)で服用でき、化学療法に比べて副作用が軽い傾向があります。
- タグリッソ(オシメルチニブ):EGFR変異の第一選択。T790M耐性変異にも有効。術後補助療法にも承認
- アレセンサ(アレクチニブ):ALK陽性の第一選択。脳転移にも有効。日本発の薬
- ルマケラス(ソトラシブ):KRAS G12C変異の初の承認薬
免疫チェックポイント阻害剤|変異なしの主力治療
ドライバー変異が見つからなかった場合、PD-L1発現率を確認した上で免疫療法の適応を判断します。
- キイトルーダ(ペムブロリズマブ)単剤:PD-L1≥50%なら第一選択。5年生存率が化学療法の2倍以上の試験も
- キイトルーダ+化学療法:PD-L1が低くても化学療法との組み合わせで有効
- オプジーボ+ヤーボイ:PD-L1陰性でもTMB高値なら有効なケースがある
詳細は免疫チェックポイント阻害剤完全ガイドをご覧ください。
ADC(抗体薬物複合体)|新世代の肺がん治療
エンハーツ(T-DXd)はHER2変異型非小細胞肺がんに承認されており、HER2変異のない肺がんへの適応拡大治験も進んでいます。また、Dato-DXd(ダトポタマブ デルクステカン)はTROP-2を標的とするADCで、治験段階です。
- TROPION-Lung08(Dato-DXd):国内27施設参加のTROP-2標的ADC試験
- シグボタタグ ベドチン試験:非小細胞肺がんの新規ADC試験
- エンハーツ(T-DXd)完全ガイド
ステージ4(転移性)肺がんの治験という選択肢
標準治療に加えて、または標準治療が効かなくなった場合に「治験」が選択肢になります。ステージ4でも多くの試験が参加可能です。
治験は「最後の手段」ではありません。最先端の薬をいち早く受けられる機会として、診断早期から担当医に治験の可否を相談することをお勧めします。
- 肺がん治験2025年版:現在国内募集中の試験一覧
- 肺がん治験の主要実施施設
- 国立がん研究センターの治験
よくある質問(FAQ)
肺がんと言われたら最初に何を確認すればよいですか?+
まず「遺伝子検査(ゲノム検査)」を受けることです。EGFR・ALK・ROS1・KRAS G12C・HER2などの変異があるかで治療方針が大きく変わります。検査結果が出るまで治療を急がないよう担当医と相談してください。
ステージ4でも治る可能性はありますか?+
完全寛解(がんが消える)は難しい場合が多いですが、分子標的薬や免疫療法によって5年以上の長期生存が得られるケースが増えています。EGFR変異陽性で適切な薬が使えた場合、中央値で3〜4年以上の生存期間が報告されています。
タバコを吸っていない人の肺がんでも標的薬は使えますか?+
はい。むしろ非喫煙者の腺がんはEGFR変異陽性の割合が高く(日本人女性の腺がんで特に多い)、タグリッソなどの標的薬が非常に有効なケースが多いです。喫煙歴に関わらずゲノム検査を受けることが重要です。
免疫療法と化学療法はどちらがよいですか?+
PD-L1発現率・ドライバー変異の有無・全身状態によって異なります。PD-L1が高い場合は免疫療法単独が有効で副作用も少ない傾向があります。低い場合は化学療法との組み合わせが標準です。主治医に自分のバイオマーカー結果を踏まえて確認してください。